それって無意識?
「アーティファクトについての本が読みたい?」
部屋にやってきたアンジェリークの申し出に、レインが驚いたような表情になる。
「ええ、私にもわかるような簡単な物があったら読んでみたいと思ったのだけれど・・・」
「入門書的な物があるから、初心者にはそれがちょうどいいと思うが・・・アーティファクトに興味があるのか?」
「興味があるというか・・・ちょっと勉強してみたいなと思って」
「そうか。俺でよければ、色々教えてやるよ」
アンジェリークがアーティファクトに興味を持ってくれたことが嬉しかったのか、レインの顔に笑みが浮かぶ。
「じゃあ、何冊か選ぶからちょっと待っててくれ」
張り切った様子で本を選んでいるレインを見ながら、アンジェリークはクスッと笑みを漏らした。
(アーティファクトの事になると、本当に子供みたい)
レインは本当にアーティファクトが好きなんだ、とつくづく思う。
アーティファクトの話をしている時は目がキラキラしている。まるで小さな子供みたいに。
だから、そんな風にレインが夢中になるアーティファクトについて、もっと知りたいと思ったのだ。
(だって、大切な仲間の事だもの。もっと色々知りたいと思うのは変じゃないわよね)
けれど、ただ単に「仲間だから」と言うのとは・・・少し違うような気もする。
同じ陽だまり邸の仲間であるニクス・ヒュウガ・ジェイドについて知りたいと思う気持ちと、レインの事を知りたいと思う気持ちは、どこか違うように思う。
(何が違うのかしら・・・?)
「アンジェリーク?」
そんな事を考えていると、こちらを振り向いたレインとパチッと目があった。どうやら、無意識にじっとレインを見つめる形になっていたようだ。
「どうしたんだ?じっとこっちを見て・・・」
「う、ううん。なんでもないの」
不思議そうに尋ねるレインに、アンジェリークはフルフルと首を振る。
「そうか・・・あ、とりあえず初歩的な事ならこれなんかを読めば分かると思う。貸してやるから、ゆっくり読んでみろよ」
「わかったわ。ありがとう、レイン」
差し出された本を受け取りアンジェリークが笑顔で礼を言うと、レインの顔が微かに赤くなるがアンジェリークはその事には気づかないようだ。
「えっと・・・お前さえ嫌じゃなかったら、ここで読んでいかないか?もし疑問があったらその場で教えてやれるし」
「それもそうね。じゃあ、ここで読ませてもらうわ」
「ああ。とりあえず、このイスに座ってくれ。分からない事があったらあったら遠慮なく聞いていいからな」
「ありがとう。分からなかったら教えてもらうからよろしくね」
そう言うと、アンジェリークはレインが用意した椅子に腰掛け、渡された本を開いて読み始める。一方のレインも、自分の机の椅子に腰掛け読んでいた本の続きを読み始めた。


(とりあえず、変に思われてはないよな)
本に目を落としながら、レインはほっと息をついた。
顔が赤くなっていた事も、もう少し側にいて欲しくて「ここで呼んでいかないか?」と言った事も、アンジェリークは気がついていないようだ。
そして、本を探していた時自分を見つめていたアンジェリークに、淡い期待を抱いた事も。
自覚したのは暫くしてからだったが、アンジェリークにいわゆる「一目惚れ」状態だったレインは、アンジェリークの一挙一動に敏感に反応してしまう。
振り向いて欲しい。けれど、それを素直に口には出せない。
口に出せない分、気がつくとアンジェリークの事を目で追っている。無意識のうちに彼女の事を視線が追いかけているのだ。
視線を移すと、真剣に本を読んでいるアンジェリークの姿が目に映った。
今も、こうして彼女に惹きつけられて目が離せない。
(重症だよな・・・)
内心でレインが苦笑を浮かべたその時
「ねぇ、レイン。ここに書いてある事なんだけど・・・」
本を読んでいたアンジェリークが顔を上げて、そう言いながらレインの方へ顔を向けた。当然、アンジェリークを見つめていたレインとばっちり目が合ってしまう。
「あ・・・えっと・・・何だって?」
「あの・・・ここなんだけど」
「ああ、そこは・・・」
内心の動揺をポーカーフェイスで隠して平静を装い、アンジェからの質問に答えるレイン。
「──って事だ。分かったか?」
「ええ。レインって説明が上手なのね。すごく分かりやすいもの」
「そうか?褒めても何も出ないぞ?」
軽い調子でそう言ったレインに、アンジェリークがおかしそうにクスクスと笑う。やがて、疑問が解決したアンジェリークは本の続きを読み始め、レインも自分の読んでいた本へ向き直った。
しかし、集中していたのは短時間。気がつくと、レインはまたアンジェリークの方へ視線が引き寄せられてしまう。
(またか・・・無意識ってヤツは恐いよな)
自分の事ながら、かなりベタ惚れなんだなと呆れてしまう。それでも、やはりアンジェリークから目を離せなくて。
そのままアンジェリークから視線を逸らせずにいると、その視線に気がついたのかアンジェリークが不意にこちらを振り向いた。
「ど・・・どうした?また何か分からないところでもあったか?」
「ううん。レインがこっちをずっと見てるから・・・時々、そう言う時あるわよね?」
「そ、そうか?」
アンジェリークに気がつかれていた事に、レインは内心かなり動揺してしまう。
「お前結構危なっかしい所があるからな。心配して無意識に目が離せないでいたってやつだろ」
「もう・・・危ないことをするのはレインの方じゃない」
ごまかすように言ったレインの言葉に、アンジェリークは拗ねたように頬を膨らませる。が、その表情はすぐに和らぎ笑顔に変わった。
「でも、何だか嬉しい。それって、レインが私の事心配して気にかけてくれてるって事よね?」
「ま、まぁな・・・」
「そんな風に私の事心配してくれてるって、やっぱり嬉しいもの。ありがとう、レイン」
そう言って、アンジェリークは本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。その笑顔に、レインの心臓がドクンと跳ね上がった。顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「・・・レイン?顔が赤いけどどうしたの?」
レインの状態に気がつかないアンジェリークが不思議そうに問いかける。
そんなアンジェリークへ、レインは心の中で密かに問いかけた。
(まったく・・・お前のそれも『無意識』ってやつなのか?)
こうやって、さり気ない仕草や言葉で自分をますます惹き付けていくのは──


自分の気持ちにまだ気がついていないアンジェリーク。そんなアンジェリークへの気持ちに気づいているが一歩踏み出せないレイン。
そんな二人の想いが通じ合うのは、あとほんの少し先の事だった。


管理人 はい、レイアン祭の投稿作品いかがだったでしょうか??
レイン  なんか、俺が一方的に片思い・・・って感じもするんだが??
管理人 だから〜、気づいてないだけでアンジェちゃんも君に惹かれてるんだってば。安心してよ。
レイン  い、いやっ・・・別に気にしてるとか言うわけじゃないが・・・
管理人 とりあえず、レイアン祭無事終了お疲れ様でした〜〜!!
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