狼さんとわたし。
カノコさんのところでキリ番を踏み頂いた創作です。
甘い瑛v主をとリクエストしました。
世話焼き瑛たん萌です〜
卵焼き食べさせたり食べ方のしつけをしたり・・・さすがお父さん(おい)
ほのぼの&ラストの甘い雰囲気・・・良かったです。ありがとうございました!!
テルたんは優しい。


「遅れてゴメン!大丈夫だったか?…ナンパとか…」


テルたんは心配性。


「バカ!厨房に入るなって言ったろ、怪我でもしたらどうすんだ。
あっ、そんなに一度に沢山トレイに乗せるなって!」


テルたんは世話焼き。


「あ〜、またパンなんか食って…ちゃんとした物食べろっていつも言ってるだろ。
しょうがないな、俺の弁当半分やるから。」




長い指が器用にお箸を使い、卵焼きを半分に分ける。

本当はお弁当を買ってきてもいいのだけど、お箸を使っている所をテルたんに見つかると怒られるから、最近昼食は購買のパンばかり。
私はお箸の持ち方が間違っていると、テルたんが言っていた。


「ほら、口開けろ。」


半分こにされた卵焼きが口の前まで運ばれる。
確かに私はお箸で何かを摘むのが苦手だ。
摘んでも長時間持っていられず、すぐ落としてしまう。

テルたんの指は器用だなぁ…


「な、何見てんだよ…。」


どうしたらこんな風に綺麗にお箸を使えるのか、手元を眺めていたら何故かテルたんが赤くなっていく。
不思議に思いつつもご馳走の前では些細な事。
美味しそうな卵焼きを早く食べたくて、深く追求せずに口を開けた。


「おいひぃ」

「当たり前だ。食べながら喋るな、行儀悪い。」


一見すると怒ってるような物言いで、だけどちゃんと、次のおかずを運んでくれる。
お箸は使いづらいから苦手だけど、テルたんがこうして食べさせてくれる時は好き。
料理をしている時やお弁当をはんぶんこする時、器用に動くテルたんの手が、好き。


「きんぴら、もっと。」

「だから〜、食べながら喋るなって。バカ。」

「ん。」


夕方になると器用な指の長さを、意外と大きな掌の体温を確認する。

広げた掌を上向かせ、差し出されたそれに自分の手を重ねた。


「どこか寄ってくか?」


帰り道。こうするのは当たり前で、彼が「手を繋ごう」と言った事はない。
私も「手を繋ぎたい」とは言わない。
何も言わなくても手を繋いでいるから、二人とも言わない。


「…何じろじろ見てるんだよ。」


何となく、いつも通りの横顔を眺めていたら急に振り返って立ち止まる。


「あんまり見るなよ…、なんか…恥ずかしいだろ。」

「どうして?」

「どうしてって…」

「なんで恥ずかしいの?」

「いや、だからそれは…」

「どうしてテルたんはほっぺた赤いの?
なんで見てるとすぐそっぽ向くの?
恥ずかしいと髪の毛触るのはなんで?」


頬に差した赤みが見る見る耳まで広がっていったけど、観察途中で得意のチョップを見舞われてしまった。
外方を向いて項のあたりを押さえる彼。

間違ったこと言ってない筈なのに、何でだろ?


「あーっもう、ウルサイ!
何で何でって、お前は赤ずきんか!」


チョップする為に離されてしまった掌を見ていたら、不意に投げ掛けられた懐かしいフレーズに顔を上げる。


「赤ずきん?」

「そう。何で?どうして?って質問ばっか。
余計な事聞かなきゃ食べられずに済んだかもしれないのに。」

「赤ずきん…」


もう一度、僅かに温もりの残る自分の掌へ視線を落とし、彼を見上げた。
繋いでいた筈の器用な指先が今は彼の髪を梳き、肩の向こうで赤い頭巾のような夕日が見え隠れしている。


「いっぱい聞くと、テルたんも狼になる?」


真ん丸に見開かれた瞳。
何か言い掛けてすぐに口をつぐむ。
テルたんの向こう側にある夕日が、近付いてきた肩の後ろに消えた。


「テルた…」

「こんな時位黙れ、バカ。」


薄い唇が目の前で僅かに開き、食べらるのかと目を瞑る。


一秒


二秒


だけどそれは、三つ数える前に離れていった。


「…食べないんだ、狼さん。」

「食べてもいいのかよ。」


言葉の代わりに首を振って、離れたままの掌を捕まえる。


「食べられたら手繋げなくなっちゃうから困る。」


沈みかけた夕日よりも、何故か彼は真っ赤で、
テルたんの方が赤ずきんちゃんみたいだと思った。



end.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送