おとぎ話の続き

「愛してる・・・」
今までの色々な想いがすべて込められた、瑛からの言葉。
そして交した口づけ。
おとぎ話の人魚と若者のように、約束の口づけを交した幼い二人は、約束の海で再び出会ったのだった。
そして――

「瑛の部屋、なんか久しぶりかも」
何度か訪れた事のある部屋を見回し、が感慨深げに呟く。
灯台の下で想いを確かめあった二人は、とりあえずゆっくり話ができるよう珊瑚礁の二階にある瑛の部屋へとやってきた。
「そういえば、この部屋なんだよね。マスターから人魚と若者のお話聞いたの」
「そうだな・・・」
ベットに腰掛け懐かしそうな表情で部屋を見回すに、瑛も表情を和らげる。
幼い頃に出会った二人は、ここで瑛の祖父である総一郎に「人魚と若者」の話を聞き、そして話の中の人魚と若者のように、この海でまた出会えるよう口付けを交わした。
その約束は、こうして今果たされたのだ。
「『口付けだよ。この海でまた逢えるように』」
「っ!!おまっ・・・・それっ!!」
幼い頃の自分が言った言葉を反復され、瑛の顔が真っ赤になる。
「瑛ってば、かなりマセた事言う子供だったんだね。っていうか、その日あったばかりの子にキスするっていうのもどうかと思う・・・された方はびっくりだったんですけど」
「うるさいな・・・あの話に俺とおまえを重ねてたから、ついああいう言葉が出たんだよ」
「純粋だったんだ〜、今は捻くれてるけどね」
「・・・・・どうやら、久しぶりにチョップが必要らしいな」
そう言うが早いか、が避ける隙を与えずに瑛のチョップが見事にの頭に決まった。
「いった〜い」
「人をからかったお前が悪い」
そういって、拗ねたようにそっぽを向く瑛。その様子がなんだか可愛くて、は思わずクスクスと笑みを漏らす。
こんな何気ないやり取りも、随分久しぶりのように感じる。
(あの日、瑛に「さよなら」と言われてからひと月位しかたっていないのに)
またこうして、二人で喧嘩したり、笑ったりしながら一緒にいられるようになって本当に良かった。
「・・・何だよ、妙にニコニコして・・・」
自分の方を見てニコニコしているに、瑛が不思議そうな表情を浮かべる。
「ん?・・・幸せだな〜って思って。こうしてまた瑛と一緒にいられて」
「───っ!」
本当に幸せそうな笑顔と共に告げられたのストレートな言葉に、瑛は真っ赤になって言葉を詰まらせた。
「・・・おまえ・・・ほんと無防備すぎ・・・」
「へ?それってどう言う──」
言いかけたの言葉が、最後まで言う前に遮られる。不意に瑛がへキスをし、唇を塞いだのだ。同時に、ギュッと強く抱きしめられる。
「んっ・・・」
徐々に深くなる口付けにの身体から力が抜け、そして──
ドサッ
「えっ・・?」
気がつくと、そのままベッドに倒れこんでいた。
「ちょ、瑛!?」
「あのな、おまえ状況分かってないだろ?男の部屋で二人っきりだってのに、無防備すぎるんだよ。」
「だって、今までだってここに来たことあるじゃない。クリスマスの夜は一晩一緒だったんだし」
「それは、俺が我慢したんだよ。俺があの時どれだけの苦行を強いられたと・・・・じゃなくて!とにかく、無意識に色仕掛けし過ぎ」
「色仕掛けって・・・・・とにかく、一旦そこどいて。ね?」
「やだ」
「こらっ、なに駄々っ子みたいなこといって・・・」
必死に押しのけようとするをさらに強く抱きしめ、瑛はふと真剣な口調になってこう続けた。
「やだ。・・・・俺がどれだけ我慢してたと思う?ずっと待ってて、やっと見つけた人魚なんだ。馬鹿だったから、一度は自分から手を離したけど・・・こうして、ようやく戻ってきた。俺・・・お前を、絶対離したくない・・・」
「瑛・・・」
まるで小さな子供のように、必死に訴える瑛に、はそれ以上何も言えなくなる。
それだけ、瑛は自分を想ってくれているのだ。けれど――
(こ、この体勢はまずいよ〜)
動揺するの気持ちを知ってか知らずか、瑛は抱き締めたままのに再び深く口付けてきた。
「んっ・・・!」
さらに深くなる口付けに、が苦しげな声を漏らしたその時。
「瑛、戻ってきてるのか!?」
一階から、聞き慣れた声が聞こえてきたのだ。
「じ、じいちゃん!?」
「マスター!?」
声と同時にパタパタと二階へ駆け上がる音が近づいてきて、二人は慌てふためいた。そして次の瞬間――
ドンッ!
ゴンッ!
「いてっ!」
ガチャ!
「瑛っ!」
ドアを開けて部屋へ飛び込んできた総一郎が目にしたのは、ベッドに腰掛け「あははは・・・」と苦笑いをしている珊瑚礁の元従業員と、床に転げ落ちている孫の姿だった。
慌てたに思いきり突き飛ばされた瑛は、そのままベッドから転げ落ち頭をぶつけてしまったのだ。
・・・「はね学のプリンス」形無しである。
「・・・瑛は何で床に転がっているのかな?」
「えっと・・・ちょっとふざけてたら落っこちちゃったみたいで」
やや言い訳じみたの言葉に不思議そうな顔になる総一郎だったが、瑛が戻ってきた事の方が重大だと思い出し、表情を和らげた。
「瑛・・・戻ってきたんだね」
「うん。じいちゃん・・・ごめん、色々迷惑かけて」
床にぶつけた頭を抑えながら起き上がって体勢を整えると、瑛は神妙な顔つきで謝る。
「なぁに、気にすることはないさ」
穏やかな笑みを浮かべそう答えると、総一郎はの方へと視線を移した。
さんも・・・ありがとう、瑛を信じて待っていてくれて」
「そんな、私は別に・・・」
「僕の言った通りだったでしょう?こんな素敵なお嬢さんを残して、どこかに行ってしまうはずはないって」
「じ、じいちゃん!?」
真っ赤になってしまう二人を、微笑ましげに見つめる総一郎。二人をずっと見守ってきた総一郎にしてみれば、こうしてまた二人が一緒にいることが自分のことのようにうれしいようだ。
「そうだ、折角だし久しぶりにコーヒーを入れようか。下にまだ少し豆が残っているし・・・珊瑚礁ブレンドを用意しよう」
二人も下へ降りておいで、と言い残し、総一郎は瑛の部屋から出て下へと降りていった。
残された二人は、そろって大きなため息をこぼす。
「はぁ〜・・・びっくりした。っていうか、おまえよくも思いっきり突き飛ばしてくれたな」
突き飛ばされた事を思い出し、瑛が面白くなさそうに愚痴る。
「しょうがないでしょう、あの場合はっ!大体、急にあんなことするから悪いんだよ!瑛のエッチ!」
「あんなことって・・・アレくらいでそんなこと言ってたらそれより先に進めな──」
「キャ〜!何言ってるのよ!!瑛のばかっ!スケベ!!」
「だって男だし」
「開き直るな〜〜!!」
事も無げに言ってくる瑛に、は顔を真っ赤にしながら両手でポカポカと瑛を叩きだす。
「うわっ・・・・ばか、やめろって。大体、おまえだってデートの時くっついてきたりしただろう?」
「それとこれとはぜんぜん違う!!そもそも、客寄せに水着エプロンさせるような人と一緒にしないでよねっ!」
「今更それを言うか・・・っていうか、わかったから落ち着け」
流石に不毛な争いになってきたので、瑛はを黙らせるべく自分をポカポカ叩くの頭にチョップを繰り出した。
「いたっ!」
「ほら、あんまり遅いとじいちゃんがまた様子見にくるぞ」
「はーい・・・」
まだご機嫌斜めなものの、一応瑛の言葉に素直に従う
そんなに苦笑いを浮かべると、瑛はやや決まり悪そうにこう続けた。
「まぁ、その・・・悪かったな。なんていうか、ちょっと押さえがきかなかったっていうか・・・」
「・・・うん」
「おまえの事大事だし・・・これからは、取りあえず気をつける」
「分かればよろしい」
殊勝に謝る瑛にいささか偉そうにそう答え、は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「じゃあ、下に行くか。じいちゃんまってるだろうし」
「うん。・・・・あ、ねぇ瑛」
「ん?」
ドアに向かって歩き出したところを呼び止められ、瑛がを振り返った。
「えっとね・・・言っとくけど、別にイヤだった訳じゃないからね」
「へ?」
「いきなりで驚いたってだけであって・・・だから・・」
?」
の言おうとしていることが分からず、怪訝な顔をする瑛。その様子にじれたのか、は赤い顔をしたまま一気にこうまくしたてた。
「だから!!瑛とだったら別にイヤじゃないんだからねって事!!」
じゃあ、先行くからっ!と付け加え、はバタバタと部屋を飛び出していく。
残された瑛は、の残した言葉の意味が理解できず、その場に立ち竦んでいた。やがて、その言葉の意味を理解した瑛の顔は、みるみる赤くなっていく。
(だから、無意識に色仕掛けはするなって・・・・っていうか今そう言われてもどうしろっていうんだよ!!)
「これじゃ生殺しじゃないか・・・・」
そう呟いてがっくりと肩を落とすと、瑛はの後を追って部屋を出て行くのであった。


管理人:はい!GS2初創作、いかがだったでしょうか?
瑛  :・・・俺、かっこ悪い・・・・(がっくり)
管理人:大丈夫!!君はそう言う「アホな子」のところが可愛くていいんだから。
瑛  :本人を目の前にして「アホ」言うな!!っていうかとのラブラブはどこに・・・
管理人:十分ラブラブバカップルだと思うけど・・・(まだ足りないのか、この子は)
瑛  :足りない!(キッパリ)
管理人:・・・・そうですか(汗)えっと・・・取りあえず次の話をお楽しみに!!

                                          


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