「・・・・最近全く会えてねぇ・・・」
手にした機械をながら、ゼフェルはポツリとそんな言葉を漏らした。
今日は日の曜日で、今ゼフェルは私邸の自室にいてそこには彼以外には誰もいないため、その言葉を聞いているものは他にはいない。まぁ、だからこそ漏らした一言ではあるのだが・・・
「向こうの宇宙も安定したけど、何だかんだで忙しいまんまだったしな。アイツも、ようやく負担が減って落ち着いたばっかだし」
ゼフェルが会えていないと言っているのは、聖獣の女王であるアンジェリークの事だった。
二人は公に・・・とはいかないが、神鳥・聖獣双方の守護聖達と女王補佐官、そして神鳥の女王に認められている恋人同士だ。
だから、聖獣の宇宙が危機に訪れ、宇宙を支える為に力を振り絞っているアンジェリークをゼフェルは誰よりも心配していた。
しかし、補佐官のレイチェルからは面会を許されず彼女の様子を確かめる事は出来ない状態だったため、ヤキモキしながらも見守るしか出来ない。
だから、聖獣の宇宙が少しでも早く安定するよう──アンジェリークの負担が軽くなるようにと、伝説のエトワールとして懸命に動いていたエンジュにも積極的に協力していたのだ。
現在は聖獣の宇宙も安定し、一時は人前に出ることが出来なかったアンジェリークも今は元気になっている。
しかし、ゼフェルが最後にアンジェリークに会ったのは、聖獣の宇宙に守護聖が約半数集まりようやく人前に出れるまでアンジェリークが回復した時に様子を見に行った時だ。
それ以降は会う機会がなかったため、完全に元気になったアンジェリークとは会えていない。もう大丈夫だとは聞いているが、やはり自分の目で確かめたいと思う。
(ちょっと違うか?)
確かに心配なのは間違いないが、やはりただ純粋に「アンジェリークに会いたい」というのが正直な気持ちなのだろう。
「でも、そう簡単に会えるもんじゃねーしな・・・」
女王と守護聖、まして別の宇宙に属しているという立場的にもともとあまり頻繁に会える間柄ではないのだ。2つの宇宙を行き来するには次元回廊を開かねばならない為、気楽に行き来する事は出来ない。
「クソッ・・・こっそり回廊開いて向こうの聖地に押しかけてやるかな」
そんなことをゼフェルが呟いたちょうどその時、部屋のドアをノックする音と聞きなれた声が聞こえてきた。
「ゼフェル、いるかい?」
「・・・・いねぇ。とっとと帰れ」
「うん、わかった。・・・って、いるんじゃないかっ!!」
まさに取り付く島もないゼフェルの一言に、ドアが勢いよく開けられ声の主──ランディが部屋へと入ってきた。
「ゼフェル、来客にそう言う態度はよくないぞ」
「あ〜、うるせーなぁ・・・テメーなんか呼んでねぇだろっ!大体、休日にまで人ん家押しかけてきて一体なんなんだよ」
いつもの調子でランディへ噛み付くゼフェルだったが、次の瞬間にランディの背後から投げかけられた声に、来客がランディ1人でないことに気がついた。
「もぅ、ゼフェルったら何そんなにイライラしてるのさ」
「ん?なんだ、マルセルまで一緒なのか。そろいもそろって何なんだよ一体」
ゼフェルの言い方が面白くないのかマルセルは頬を膨らませむくれるが、気を取り直すと用件を話し始める。
「あのね、僕達用事で今から聖獣の聖地に行く事になったんだけど、よかったらゼフェルにも一緒に来て欲しいんだ」
「はぁ?なんでテメーらのお供なんかしなくちゃ・・・・」
半ば条件反射で拒否をしようとしたゼフェルだったが、ある単語に気がつきその言葉を止めた。
「聖獣の・・・聖地に?」
「ああ。今から行ってくるんだ」
コクンと頷くランディに、ゼフェルの顔つきが変わる。
(聖獣の聖地に行けば、アイツに会えるかもしれねーじゃん)
これはまさに渡りに船というやつだ。便乗しない手はないだろう。
「よし、しょうがねーから一緒に行ってやる。」
「わ〜、ありがとうゼフェル」
「しょーがねー、は余計だけどな」
「そうと決まれば善は急げだ。とっとと行くぞ」
ランディの突っ込みは見事にスルーして、ゼフェルはいそいそと部屋を飛び出して行く。
「上手くいったね、ランディ」
「ああ。後は向こうで上手くやってくれれば万事OKだな」
顔を見合わせてそんな事を囁き合うと、ランディとマルセルもゼフェルの後を追って部屋を後にした。


「で、用事って一体何なんだ?休日だってのに仕事でも言いつけられたのか?」
「ん〜・・・まぁね」
「レイチェルに渡し物があるんだよ」
「渡しもの・・・ねぇ」
次元回廊を開く許可が出るのだから、それなりにちゃんとした用事なのだろうが・・・
(けど、なんで俺をわざわざ引っ張ってきたんだ?まぁ、ちょうどよかったけどよ)
不思議に思うゼフェルだったが、中庭に差し掛かった時に前を行く二人が休に立ち止まった為、思考をストップされる。
「なんだよ、急に止まって」
「悪いけど、ゼフェルはここで待っててくれないか?」
「はぁ?おいおい、じゃあ何の為に俺を連れてきたんだよ。イミわかんねーぞ」
「いいから、とにかくここで待っててくれよ。すぐ戻るからさ」
「ゼフェル、ちゃんと待っててよ。勝手に動いたりしたらぜ〜ったいダメなんだからね」
「おいっ!!」
怒鳴るゼフェルにお構いなしに、ランディとマルセルは宮殿の中へと入っていってしまった。一人その場に残されるゼフェル。
「・・・・・訳わかんねぇ・・・」
ポツリと呟くと、ゼフェルは側にあるベンチへドカッと腰掛けた。
レイチェルに会いに行くなら、一緒に行けばアンジェリークに会わせてくれるよう頼めたのに。
これでは何の為についてきたのか分からない。
「あ〜っ!あいつらの言うことなんて知るかっ!勝手に中に入ってアイツのとこに――」
やけっぱちとばかりにゼフェルがベンチから立ち上がったその時、宮殿の方から足音が聞こえてきた。
気が付いてそちらを振り返ると――
「ゼフェル様?」
「アンジェ?」
そこに立っていたのは、会いたいと思っていたアンジェリークだったのだ。
休日の為か、普段の女王の正装ではなく私服姿で、その姿はごく普通の少女に見える。ここにゼフェルがいるとは思っていなかったのか、かなり驚いた表情だ。
「何で・・・ゼフェル様がここにいらっしゃるんですか?」
「俺は、ランディとマルセルの付き添いってやつだけど・・・」
「あ、そうだったんですか」
「オメーこそ、どうしたんだ・・・って、ここにオメーがいるのは変でもなんでもないか。散歩にでも出てきたのか?」
ゼフェルの言葉に、アンジェリークは少し困ったような表情を浮かべた。
「はい。レイチェルが、休日くらいのんびり過ごしなさいって言うので・・・ついでに、レイチェルから中庭である人が待ってるからこの手紙を渡して欲しいって言われたんです。それで、中庭に・・・」
(補佐官が女王を雑用に使うなよ・・・)
思わず呆れ顔になりながら、ゼフェルはアンジェリークが差し出した手紙へ目を向ける。
中庭で待っている人物・・・とは、ひょっとして自分の事なのだろうか?
「ゼフェル様の事なんでしょうか?この手紙を渡す相手・・・」
「他にこの辺に人はいねーみてーだし、たぶんそうだろ。ちょっと見せてみろよ」
そういってアンジェリークから手紙を受け取ると、ゼフェルは封筒を開けて中を取り出した。入っていたのは、どうやらメッセージカードのようだ。
その内容は──
『ゼフェル様へ  お誕生日、おめでとうございま〜す♪
私とランディ様達からの、ささやかなバースデープレゼントです。夕方まで2人での〜んびり過ごしてくださいねvvあ、色々連れまわして陛下を疲れさせないで下さいよ。
では、楽しんできてください☆
聖獣の宇宙の超有能な女王補佐官 レイチェルより』
「バースデープレゼント・・・?」
「え?」
「ほら、こういう事らしいぜ」
キョトンとするアンジェリークに、ゼフェルはレイチェルからのカードを差し出した。それを受け取って内容を読んだアンジェリークの顔に笑みが浮かぶ。
「もう、レイチェルってば・・・」
「内容からすると、ランディ野郎とマルセルもからんでたみてーだな。ったく、おせっかいな奴らだぜ」
アンジェリークの手からカードをとって封筒に戻しながら、苦笑を浮かべるゼフェル。口調は乱暴だが、そこには感謝の気持ちが現れていた。
誕生日など本人はすっかり忘れていたのだが、こうして忘れずにいてくれたのはやっぱり嬉しい。
ゼフェルとアンジェリークは、顔を見合わせクスクスと笑いあった。
「まぁ、そう言うことならさっさとどこかに出かけようぜ。なんせ補佐官公認なんだしよ」
「そうですね。・・・でも、嬉しいです。本当はあきらめかけてたから」
「は?」
不思議そうなゼフェルに、アンジェリークが嬉しそうに答える。
「私も、ちゃんとゼフェル様のお誕生日覚えていたんですよ?本当は直接お顔を見ておめでとうございますって伝えたかったけれど、そう簡単に会いに行くことも出来ないですし・・・だから、メールのメッセージやプレゼントを送る位しか出来ないってあきらめてたんです。でも、こうして会う事が出来たんですから」
そう言うと、アンジェリークは満面の笑みを浮かべこう続けた。
「ゼフェル様、お誕生おめでとうございます。ゼフェル様が生まれてきてくれて、こうして出会えて、私本当に嬉しいです」
「アンジェ・・・」
女王陛下としてじゃなく、一人の女の子として自分に向けてくれるアンジェリークの笑顔。その笑顔に、ゼフェルの顔も自然にほころぶ。
「・・・・サンキュー、アンジェリーク」
そう言って浮かべたゼフェルの笑顔は、嬉しいという気持ちが素直に現れた最高の笑顔だった。


「もうゼフェル様ったら。折角久しぶりに会ったんだから、そこでギュ〜って抱きしめるとかすればいいのに」
「レイチェル・・・その発言はちょっと問題あるんじゃ・・・」
「良いんです!あの子が幸せなのが一番なんですから」
「あはははは・・・・」
きっぱり言い切るレイチェルに苦笑を浮かべるランディ。その横では、同じく苦笑を浮かべているマルセルと、会話の意味をあまり理解していないであろうユーイがニコニコ笑って立っている。
実は陰からこっそり二人の様子を見ていたこの四人。
ちなみに、なぜユーイがいるのかと言うと、実はユーイもこの件に絡んでいるからで。
最初、アンジェリークに会えずイライラしていたゼフェルの為に、ランディとマルセルがゼフェルの誕生日に合わせてアンジェリークに会わせてやろうと考えたのだが、ちょうどその時にユーイが執務の事でランディの元へやってきたのだ。
二人はユーイにレイチェルへの橋渡し役を頼み、ゼフェルの誕生日に何か理由を付けてレイチェルに自分達を聖獣の聖地に呼び出して貰った。
計画としては、その呼び出しで出かけるのにかこつけてゼフェルを聖獣の聖地へ連れて行き、あらかじめ決めておいた場所でゼフェルを待たせておく。一方レイチェルの方で、上手くアンジェリークがその場所へ行くよう誘導してもらい、二人を鉢合わせる・・・という算段だった。
「上手くいったみたいだね。なんか、凄く回りくどいやり方だった気もするけど・・・」
「でも、上手くいったんだからいいじゃないか。二人とも嬉しそうだし・・・な、ユーイ」
「ああ、陛下もゼフェル様もほんとに嬉しそうだぞ。俺たちいい事をしたんだな」
「まぁ確かに・・・喜んでもらえてよかったよね」
頷きあう風の守護聖コンビに、マルセルも同意する。
「あ、二人とも移動するみたいだね。それじゃあ、後を追いかけなくちゃ」
「レイチェル・・・尾行する気なのかい?ゼフェルにばれたらアイツめちゃくちゃ怒ると思うよ」
「私には、補佐官として陛下を見守る義務がありますから」
「え?それじゃあ・・・俺も守護聖として陛下を見守った方がいいのか?」
ランディにスパッと切り返すレイチェルの言葉に、ユーイが的外れな反応を返す。
「そうそう、だからユーイも一緒についてきなさい」
「レイチェル、さり気なくユーイまで巻き込む気だね・・・」
「ランディ様は黙ってて下さい」
「あ〜もう!三人とも、静かにしないと二人にばれちゃうよ〜〜」
メンバーは違っても、相変わらずストッパー役なマルセルであった・・・


その後、結局四人そろって後をついていったのだが、見事にばれゼフェルが顔を真っ赤にして怒鳴り散らす・・・という展開が待ってたのだった。


管理人   遅くなりましたが・・・お誕生日おめでとうございます!ゼフェル様vv
ゼフェル  おう、サンキューな。(コレットちゃんに会えたのでご機嫌の模様)
管理人   思えば、ゼフェル様に出会って5年は経つんですね・・・早いな〜
ゼフェル  そーだな。ま、とりあえず2年連続で誕生日祝ってくれたのは例を言うぜ。他は止まってるけどな
管理人   ぎゃう!!が、がんばります・・・・(汗)
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