HAPPY  TIME(当日)
4月24日──月森の誕生日当日。
今日は、家へ帰ってきた両親、そして香穂子も一緒に誕生日を祝ってくれることになっている。数年ぶりの賑やかな誕生日。
月森にとっては、誕生日を楽しみに思うなんて久しぶりの事だ。
そして、待ちに待った放課後。
着替えなどのために一度家へ戻る香穂子を家まで送り、月森は一足先に自宅へと戻った。
リビングに入ると、すでに家に戻ってきていた両親が、笑顔で出迎えてくれた。
「お帰りなさい、蓮。そして、お誕生日おめでとう」
「おめでとう、蓮」
「ありがとうございます・・・」
両親からのお祝いの言葉に、固い口調ながらも表情をほころばせる月森。
「香穂子さんは一緒じゃないの?」
「一度家に拠って戻って支度をしてから来るそうです」
「あら、そうなの。香穂子さんに会えるの、今から楽しみだわ」
「そうだな、私も楽しみだよ。蓮が選んだお嬢さんがどんな人なのか・・・」
「なっ・・・」
両親の言葉に、月森の顔が朱に染まる。どうやら二人とも、初めて会う息子の恋人に興味深々のようだ。
「と、とりあえず部屋に戻って着替えてきます」
「わかったわ。もう食事の用意は出来てるから、香穂子さんが来たらすぐに食事に出来るからね」
そんな母の言葉を聞きながら、月森は顔を赤くしたまま半ば逃げるように部屋へと戻っていった。


「お、おじゃまします」
緊張した面持ちで、月森邸の玄関へ入る香穂子。着替えを済ませた月森がリビングに下りてきてから程なくして、香穂子は月森邸にやって来た。
「香穂子、そんなにかしこまらなくていいから」
緊張している香穂子に、出迎えた月森は苦笑しながら安心させるようにそう告げる。
「う・・・うん・・・」
「とりあえず、リビングへ。支度が出来てるから」
香穂子を促し、リビングへ向かう。中に入ると、ご馳走が用意されたテーブルに座っていた月森の両親が立ち上がり香穂子を出迎えた。
「いらっしゃい、香穂子さん。蓮の母です。ヨロシクね」
「蓮の父です。蓮がいつもお世話になってるようだね」
「いえっ!!そんな・・・私のほうが色々お世話になってて・・・あ、えっと・・・日野香穂子です!今日はお招きありがとうございます!!」
ペコッと頭を下げる香穂子に、月森夫妻はにこやかな笑顔を向ける。
「そんなに緊張しないで。気を楽にして、連のお誕生日を祝ってあげてね」
「とりあえず・・・立ち話もなんだし、席について食事にするとしよう」
「あ、はい・・・」
「香穂子、君はこっちの席にどうぞ」
まだいささか緊張気味な香穂子を、月森が席へと案内する。
そろって席に着くと、まずは用意してあった飲み物をグラスに注いだ。
「では改めて・・・蓮、誕生日おめでとう」
「おめでとう、蓮」
「月森君、おめでとう!」
「ありがとう・・・ございます」
父、母、そして香穂子から述べられるお祝いの言葉に、気はずかしそうにお礼を言う月森。
こんな風に誕生日を祝ってもらうのは久しぶりだから、照れくささがあるのだろう。
グラスを手に取り乾杯をしてから、目の前の料理へと手を伸ばす。
ちなみに、今日の料理は美沙の手料理だ。久々に息子の誕生日を祝えるという事で、張りきったらしい。
「けど、あの小さかった蓮に好きな人が出来るなんて・・・子どもの成長って早いものね」
「か、母さん!」
料理を食べながらしみじみ呟く美沙に、月森が顔を赤らめた。
「そうだな。昔からヴァイオリンの事しか頭になかったのに、こんな可愛らしい恋人ができたんだから」
「・・・父さんまで・・・」
父親にまでしみじみ呟かれ、月森が益々顔を赤くする。香穂子の方も、同じように赤くなって、恥ずかしそうに俯いている。
そんな初々しい二人を微笑ましげに見つめ、月森夫妻は揃ってクスクスと笑った。
その後も、月森の小さい頃の話や、音楽の話などをしながら楽しい時間が過ぎていった──

「本当に送らなくていいのか?」
「大丈夫だよ。大体、今日は月森くんのお誕生日のお祝いに来たんだから、その本人にわざわざ送ってもらう訳にいかないもん」
心配そうな月森に、香穂子が笑顔で答える。
月森邸の門の前。本当は香穂子を送って行こうと思ったのだが、香穂子が大丈夫だというので仕方なく門の所まで見送るだけになったのだ。
「今日は呼んでくれてありがとう」
「いや、俺の方こそ、こうして君と一緒に誕生日を祝えて・・・その・・嬉しかった」
照れながらも、月森は素直に気持ちを口にし微笑を浮かべる。
「私も・・・月森君の誕生日を一緒にお祝いできて嬉しかったよ」
にっこりと香穂子が微笑み、二人の間にほのぼのとした空気が流れる。
「あ、そうそう。大事なものまだ渡してなかったんだ」
ふと思い出したように呟き、香穂子が鞄の中から何かを取り出した。
「はい、これ。お誕生日のプレゼント」
「これは・・・」
「月森くんが好きだっていってたヴァイオリニストのCDだよ。この前、まだ新しいのは買ってないっていってたから・・・」
「ああ・・・あの時の話を覚えててくれたんだな」
少し前に香穂子が月森の家に来た時、月森の好きなヴァイオリニストの話になった。その時、そのヴァイオリニストが最近出したCDはまだ買っていないという話をしたのだ。
「プレゼントどうしようか考えた時、CDがいいかもって思ってたけどどれがいいか分からなくて・・・そんな時にこの話を聞いて、ちょうどいいかなって思って。タイミング掴めなくて渡しそびれてたんだ」
「そうか・・・ありがとう」
差し出されたCDを笑顔で受け取ると、香穂子も嬉しそうな表情を浮かべる。
「それじゃ、そろそろ行くね」
「ああ。暗いからくれぐれも気をつけて・・・」
「うんわかってる。もう、心配性だなぁ〜」
月森の過保護ぶりに、クスクスと笑う香穂子。
「あ、そうだ・・・えっと・・・月森くん、ちょっと目をつぶってもらっていい?」
「・・・?別に構わないが・・・」
不意に言われた香穂子の言葉を不思議に思いつつ、月森は言われた通りに目を閉じた。すると──
フワッと、唇にかすかに触れる温もり。
「──っ?」
驚いて目を開けると、真っ赤になった香穂子が俯いている。
「えっと・・・プ、プレゼントのおまけっ!!じゃ、じゃあ、また明日ねっ!!」
くるっときびすをかえすと、香穂子はパタパタと駆け出していった。
一方の月森は、状況がつかめず呆然と立ち尽くしていたが、何があったかを理解すると顔を真っ赤にして口元を抑えてしまう。
(ふ・・・不意打ちだ・・・)
とりあえず、家の中に入る前に赤くなった顔を跳ね上がった鼓動を元に戻さないと、勘のいい両親にまた何か言われるかもしれない。
「まったく・・・君は俺を驚かせてばかりだな」
すでに姿の見えなくなった相手に向かって呟きながら月森が浮かべた表情は、今日見せた中で一番の幸せそうな笑顔だった。

END


管理人  はい、月森君誕生日創作、当日のお話でした!!よかったね〜、月森君。幸せでvv
月森   確かに・・・幸せだった(満足そうに)
管理人  まぁ、君は香穂ちゃんがいればいつでも幸せって感じだけどね。
月森   うっ・・・それは・・・その・・・・(赤面)
管理人  あ、赤くなってる〜
月森   ・・・っ!もういいだろうっ。そろそろ帰らせてもらう・・・香穂子が待っているし。
管理人  あ・・・・そうですか・・・・(最後の最後で惚気られた管理人)
       では、改めて・・・・月森君ハッピーバースデーvv
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